「語彙力を鍛えましょう」
「語彙がないと国語は上がりません」
よく言われるお話です。これは別に間違えてはいません。語彙の本を買って暗記したり、読書を通じて語彙力を増やしたりする方法も良いと思います。言葉を多く知っていることは国語において大切です。
しかし、それだけでは語彙の「落とし穴」にはまります。
このブログでは、言葉を多く知っているだけにとどまらない語彙力について書いていきます。
元の意味以外の使い方を知らない
例えば以下の分を見てください。
・外へランチに行く。
・入院中の母さん、今晩が峠だそうだ。
・君にこの問題はハードルが高い。
・亡くなったおじいちゃんを、笑顔で見送りましょうね。
・暴走するあの社長にブレーキを私がかけないといけない。
公園や山や海に出かけて、ピクニックみたいに外でランチしましょう、アウトドアのランチは楽しいですよ、という意味ではありませんよね?
入院中のお母さんが登山に出かけて、今晩くらいに峠に到着しそうだ、という意味ではありませんよね?
障害物競走が苦手な君にとって、あのハードルは普通のより高く設定されているから飛び越えるのは無理だよ、という意味ではありませんよね?
亡くなったおじいちゃんに、笑顔で手を振って見送るという、ちょっとサイコパスな一家です、という意味ではありませんよね?
スピード狂の社長が運転する車の助手席に私が座っていて、ブレーキを踏むときは私が隣から足を伸ばして踏まないといけない、という意味ではありませんよね?
外は「外食」「お店」のことですし、峠は「命の危機」のことです。他の例も大丈夫ですよね。でも、辞書には載っていません。「外」は「ある範囲からはずれたところ」としか書かれていないのです。
場所を表す固有名詞でも・・・
あだち充さんの書かれた名作漫画「タッチ」。この「タッチ」に出てくるヒロインの南ちゃんが、幼馴染の達也と和也にこんなセリフを言っていました。
「南を甲子園に連れてって」
南ちゃんが「甲子園球場への行き方がわからないから、一緒に電車に乗って南を甲子園に連れて行ってよ」というお願いを達也と和也にしたわけではありませんよ。
甲子園は、高校野球の全国大会が行われる場所です。つまり、「高校生になったら、野球の地方大会で優勝して全国大会に出場してね。南も応援するから。」ということです。
山下真司さんが熱血教師を演じるドラマ「スクールウォーズ」にもありました。
目指せ、花園!
これは甲子園のラグビー版ですね。ゴロツキの不良たちに、高校生ラグビーで全国大会を目指そうぜ、と山下真司さんが熱く語ったお話です。花園公園にお出かけしましょう、という意味では全くありません。
2つの意味の「語彙力不足」
語彙力不足には2つの意味があると、私は思います。
1つは、一般的に言われる「言葉を知らない」という意味。
もう1つは、上に例を書きましたが、「元の意味、よく使う意味とは別の意味になる使い方を知らない」という意味です。
2つ目のもの、結構ありますよね。「もう長くはない」は「命が尽きそうだ」とか、「会社の体力がもたない」は「お金がない」とか。こういう語彙力って、勉強だけでは身に付きません。語彙の本だけでは身に付きません。
勉強以外の活動の重要性
では、このような語彙力はどこで身に付くのか?
・マンガ
・ドラマ
・映画
・ゲーム
・友達との会話
等々、普段の生活から身に付くことが多いと思います。勉強はもちろん大事ですが、勉強ばかりにフォーカスしすぎると、第2の語彙力不足の落とし穴にはまります。語彙力は、勉強以外の場面でも培われるのです。
おすすめの解決策
私は読書をお勧めします。
読書とはいえ、別に「夏目・太宰・芥川」とか歴史の授業にも出てくるような有名作家のものでなくてもいいです。推理小説やゲームの小説版でもいいでしょう。何ならライトノベル(略してラノベ)でも良いでしょう。
ラノベは、その名の通り「ライト=軽い」ので、軽視する保護者の方も多いでしょう。しかし、軽いゆえに子どもたちにも読みやすいですし、何より、元の意味以外の使い方をする場面が多く描かれています。南ちゃんや山下さんのような展開が多いのです。
保護者の方ができるサポートは?
前述の通り、お子さんが言葉に出会う場面は、勉強のときだけではありません。テレビを見ていて「この言葉、どういう意味だろう?」と話してみる。会話の中で「今の表現、おもしろいね」と笑い合う。
そんな何気ない時間の積み重ねが、言葉の感性を育てます。
「語彙を増やす」というより、「会話を楽しむ」気持ちを大切にしてあげてください。それが、結果的に最強の語彙力につながります。
逆に、会話を遮って「そんなくだらない話よりも、机に向かって勉強してきなさい!」はNGです。語彙力を育てるチャンスを逃してしまいます。実は読書以上に親の役目は重要だと私は思っています。
・・・と書くと、必要以上にプレッシャーを感じる保護者の方もいるかもしれませんが、基本はお子さんとの会話を増やすだけです。お忙しいかとは思いますが、お子さんとの会話量で語彙力が決まるので、お子さんのためにもよろしくお願いします。
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